ランニングによるダイエットを成功させる効果的な方法と考え方

ランニングは、ダイエットを目的として簡単に行える運動です。テレビや雑誌でもダイエット方法にランニングが紹介されることがあり、実際にランニングを始めた理由としてアンケートで「ダイエット」とする人が多くいます。アールビーズスポーツ財団が、2018年に行ったランナー世論調査※1 では、ランニングを始めた理由として「ダイエット・減量のため」と 36%の人が回答しています。

ランニングは、スポーツやジムに通ったりせず、走るだけで誰でも手軽にできる運動でが、その成功体験はあまり聞かれることはなく、うまくいかず挫折する人の話を聞くこともあります。走るだけで体重が落ちてダイエットできるのは、とても魅力的ですが、実のところどれほどの効果があるものなのでしょうか。

贅肉と呼ばれる体脂肪とはどのようなものなのか

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ダイエットする時の目標は、カラダに溜まり、いわゆる贅肉と呼ばれる中性脂肪(体脂肪)を減らすことです。これらの体脂肪は、1kgで 約7,200kcalのエネルギーを持っています。標準的な 30歳の男性の1日の消費カロリーが、2,700kcal(女性は 2,050kcal)※2 であるため、体脂肪 1㎏がもつエネルギーは、 ほぼ 3日間の活動できるエネルギーを持っていることになります。

カラダにおける「エネルギー収支」とは

エネルギー収支 イメージ画像

人は起きてから就寝するまでに、食物を食べて吸収することを通して、カラダを動かすエネルギーになるカロリーを体内に取り込みます。様々な過程を通してカラダに吸収されたカロリーは、血液に混ざり血糖としてカラダを巡ることで、カラダを動かすエネルギーとして使われます。この際、取り込んだ血糖が全て使われれば、エネルギーの収支はプラマイゼロ、足りなければマイナスとなります。しかし、飽食の時代の現代においては、この収支がプラスになる人が多く、そして余ったカロリーは体外には放出されることはなく、後に利用するための蓄えとして体脂肪という形で貯蔵されていきます。そして貯蔵された体脂肪が消費されなければそのまま残り、次にやってくる体脂肪がさらに追加されて膨張していきます。この貯蔵された体脂肪の分量が多くなり過ぎれば、カラダのシルエットが膨れていき、いわゆる肥満の状態になります。

このプロセスは生まれてから絶えず行われてきており、今あるカラダの状態がこれまで生きてきた、エネルギー収支の結果といえます。この結果に不満がある人がいたとしても、この先の未来の収支は未定であり、上手にカロリーを消費していけば、満足できる体型にたどり着くことができるでしょう。

ランニングはダイエットに向いているのか?

女性がランニングをする イメージ画像

ランニングは、効率的・効果的なダイエットに適している方法かと問われれば、それは、適しているとも適していないとも言えます。ランニング自体はカロリーを消費する運動であるためダイエット効果は確実にありますが、脂肪を減らすことを目標している場合、その効果は限定的といえます。

カラダに溜まり、いわゆる贅肉と呼ばれる体脂肪は、1kgにつき約7,200kcalあります。これはフルマラソンを 約3回走って消費するカロリーに相当し、このような体脂肪を減らしていくのには、膨大な運動量が必要になります。

そのため、ランニングで 1~2週間というような短期的なプランで痩せたいという目標を達成することは、難しいと言えます。一方で、長期的なプランで望めば目標の達成は、可能性のあるものとなります。ただし、ここで問題になってくるのは、カロリーの収支というものは、ランニングのみで成り立つものではなく、日常生活や食生活など様々な活動によるものだということです。

食生活のコントロールで効率アップする

食事の イメージ画像

ランニングで多くのエネルギーを消費する一方で、カロリー過多になるほどの食物を必要以上に食べてしまえば、ランニングの効果が帳消しになります。ランニングで消費できるカロリーは、それほど多くはなく、体重50kgの人が 3kmを走ったとして 150kcal、5kmでも 250kcal程度のものです。これは、ごはん普通盛り(約150g)の 234kcal※3 とほぼ同じで、ケーキなどを食べてしまえば、その時点でオーバーカロリーになります。たまには、美味しいものをご褒美として食べるのはストレス解消にもなり良いことですが、毎日のことにしてしまうと、ランニングをする努力が報われなくなります。

食事については、運動で消費するカロリーとともに、食事から摂取するカロリーの 1日の目標数値を、あらかじめ決めておくと良いでしょう。たとえば、1ヶ月で 1kgを落としたいのであれば 1日あたり約 240kcal 多く消費すること目標に、食事と活動量の調整をする必要があります。

ランニングで消費されるカロリーを計算してみる

カロリーを消費するランニング イメージ画像

ランニングで消費されるカロリーは、下記の 2つの計算式で求めることができます。

【カロリー計算式】
  • <計算式1(単純な計算式)>
    エネルギー消費量(kcal) = 距離 × 体重(kg)
  • <計算式2(メッツ法)>
    エネルギー消費量(kcal) = 1.0 × エクササイズ(メッツ・時)× 体重
    (※1.0は安静座位時の身体活動の強度)

簡単なカロリー消費量の求め方として、“計算式1” のように距離と体重を掛けたわかりやすい式があります。単純で計算しやすいので、大まかにカロリーを知りたい場合には便利です。より詳細なメッツ法と呼ばれる “計算式2” に比較的近い数値が求められますが、あくまでの大まか数値であり、走行距離が長くなると誤差が大きくなるということを念頭において用いると良いでしょう。

より詳しい計算式としてメッツ(METs)を用いた “計算式2” があります。メッツは安静時である静かに座っている状態(1時間)を 1として、身体活動を行なった時に安静時と比較して何倍のエネルギーを消費したかを求めるもの※4 です。身体活動のメッツの値は「国立健康・栄養研究所」による『身体活動のメッツ(METs)表※5』に示されており、ジョギングは 7.0METs、ランニングは 8.3METs(8.0km/時) ~ 13.0 METs(22.5km/時) の間で時速に応じた値が設定されています。

例えば 50kg と 80kg の人が、時速 8km(キロ 7分30秒)の、8.3METsのランニングを、1時間して 8km 走った場合は下記のようになります。

【1時間のランニングでの消費カロリー】
  • <50kgの人> 8.3METs × 50kg = 415 kcal
  • <80kgの人> 8.3METs × 80kg = 664 kcal

走るスピードとカロリー消費の関係

速く走ろうとするランナー イメージ画像

ランニングでよく良く言われることに、ゆっくり走った方が有酸素運動として消費カロリーが多いというものがあります。距離を基準にして、同一距離であればカロリーはゆっくり走った方が消費量が多くなりますが、それはカロリー消費において効率的だといえるでしょうか。

たとえば体重 50kgの人が異なる速度で 1時間走った場合、速く走る方(9.8METs)が 75kcal多くカロリーを消費できます。この場合、遅く走る方(8.3METs)速く走る方と同様の 9.7kmまで走ると 503kcalとなり、13kcal上回りますが、12分程度余分に走る必要があります。

【異なる速度で1時間のランニングした時の消費カロリー】
  • <8.0km/時> 8.3METs × 50kg = 415 kcal
  • <9.7km/時> 9.8METs × 50kg = 490 kcal

この結果を見ると、ダイエットを目標としてランニングを行いたい場合には、時間を基準にした方が、より効率的に行えると言えます。走る速度については、走力レベルによるところが大きいため、はじめのうちは無理せずにゆっくりしたペースで走ります。その後、ゆっくり走ることに余裕が出てきたら、徐々に速度をあげて走れるようになることを視野に入れてランニングを続けて行った方が良いでしょう。また、ランニングの時間を確保することが難しい人達にとっても、距離を基準にするよりも、時間を基準にする方が現実的なものになります。

ダイエットの目標の決め方

腹囲を図る人 イメージ画像

ランニングを利用してダイエットをする場合、1ヶ月に 2kg程度を目標にしていくと、無理が少なく健康的に行えます。2kgを目標にする場合、1日のカロリー収支が おおよそ -500kcalになるようにする必要があります。それ以上を目標にする場合は、走る距離を増やしたり食事などを大きく減らすなどしないと達成が難しくなるため、カラダへの負担が増えてしまいます。どうしても大きく体重を減らしたい場合は、ランニングと食事の改善とともに、ダイエット専門のトレーナーによるアドバイスを取り入れたり、ダイエットプログラムを利用することも考えてみましょう。

ダイエットの際に気を付けたいこととして、食事を改善し摂取カロリーを減らした当初に体重が大きく減ることがあります。これは、摂取する食物の量や体内にあった便が減少することにより起こることで、体脂肪が減ったと錯覚しやすいものです。

ダイエットを成功させるために

継続 イメージ画像

ランニングを通してダイエットを成功させるためには、継続的に行っていくことが必要になります。継続していくことで走力が上がり、筋肉量が増加し、生活の中での活動量が上がるといったことを通して、カロリーの積み上げ効果が期待できます。

明確なダイエットの成果を挙げたいのであれば、3ヶ月程度は続けていくことが望ましいです。

続けることが難しいと感じる場合は、季節ごとにスタートする 3か月クールのドラマやアニメを 1つの基準にしてみてください。番組が終わるまで続けると決めてランニングに取り組むと期間がわかりやすく、番組のクライマックスが近づいてくれば ダイエット期間の終わりも見えてきます。また、番組を見る度にダイエットのことを思い出すため、続けていくきっかけになります。もし、番組が主人公の成長を描いたストーリーであれば、主人公の成長とともにあなたの体重も減っていることでしょう。


<参考文献>

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