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綺麗なランニングフォームを手に入れるために、知っておきたいカラダと呼吸のポイント

ランニングフォーム

ランニングは「走る」というベーシックなスポーツで、「走る」ことに技術が必要と思われないためか、ランニングを始めようとする時に、フォームに注目する人はあまり多くありません。ここでは、ランニングのフォームで意識しておきたいポイントなどを「体幹」「腕部」「脚部」「視線」「呼吸」の5項目に分けて解説していきます。

【目次】

ランニングとは

まずランニング、つまり「走る」という動きはどういうものかを考えてみます。

簡単に言ってしまえば「カラダを前に進める」ための動作です。カラダという表現だと漠然としてしまうので、カラダ全体の中心にある「重心を前に進める」と言い換えます。

カラダの「重心」というのは、カラダを下向きに引っ張る地球の引力に対して、カラダが反抗してバランスをとっている中心点になります。例えば、直立している時はへその少し下の付近に「重心」があり、カラダを動かせばバランスをとるために「重心」の位置は変わっていきます。

歩く動作は「重心」を進めるため、一歩一歩を繰り返しバランスをとりながら「重心」を前方に進めていく動作です。その歩く動作のスピードをあげ、「重心」を素早く進めていくことが「走る」ことで、ランニングということになります。

ランニングフォームの考え方

ランニングフォームの考え方

ランニングのフォームというのは、人それぞれに体格が違うのと同じで、個人個人で違いがあります。テレビのマラソン中継で、トップランナーの走る姿を見ていても、選手ごとにフォームは違い、独特のフォームで走っていても、とても速いランナーもいます。この違いは、骨格や筋肉の付き方などカラダがそれぞれ異なるためで、加えてトレーニングや走りへのアプローチによっても違いがでてきます。

しかし、基本的なカラダの使い方や効率的な走り方をするために、最適化されたランニングフォームの考え方というものはあります。そうしたフォームのベースの部分を押さえておくことは、クセがある自己流の走り方にならず、綺麗なランニングフォームを身につける一歩になるはずです。

ランニング初心者にとって、フォームのイロハを知ることは、走ることで生じるカラダへの負担や精神的なしんどさの軽減につながります。この点はとても重要で、ランニングを辛いものと思い込まず、楽しく続けていける運動と感じ、長くランニングを愛好するベースを作ってくれます。また、綺麗で無理のないフォームを習得することで、初心者に起こりやすい怪我や故障の防止にも役立ちます。

フォームを考える時に必要なのは、カラダの部位をそれぞれで意識しつつ、総合的な走る動作につなげていくことです。「走る」という行為は、走るという命令をカラダに伝えればできますが、あえて細かい動きを感じ取り、意図した動きを反映することで、フォームへの意識を高めることができます。

フォームで重要な「体幹」とは

フォームで重要な「体幹」とは

ランニングのフォームで、重要になってくる部位が体幹です。体幹とは、四肢(腕部・脚部)以外の部分で、おおよそ背骨が通っている部位と骨盤のある部位を指します。

体幹がランニングで重要な理由は、走る時に必要な腕や脚を動かすアクションの起点となっているからです。体幹がしっかりしていないと、地面を蹴るための力が十分に発揮できず、腕もリズミカルに振ることができません。

ランニングをしている時には、体幹がしっかり固定されていることが必要になってきます。体幹が左右にぶれていたり、フラフラしている状態では、安定した走行をすることができません。不安定な体幹は、腰が落ちた状態や、後ろにのけぞった状態になりやすく、下半身だけを使った効率の悪い走りを生み出します。また、バランスの悪い走りは、カラダに負担をかけ故障の原因にもなります。

体幹が安定しない原因として、筋力不足が挙げられます。特にお腹の部分は、安定させるための骨がないため、腹筋群を動員してカラダを支えることになります。普段運動をしていない人は、この部分の筋力が弱くなっていると予想されます。ランニングを始めれば徐々には強くなっていきますが、ランニング以外にも補助運動として腹筋・背筋運動などのを取り入れると良いでしょう。また、ランニングをする時に筋力が必要になる腰位置にある腸腰筋や、おしり付近の臀筋群を鍛えるトレーニングを取り入れると、さらに効果的になります。

骨盤を前傾させるとは

体幹でキーワードの一つに挙げられるのが「骨盤」です。アフリカ出身の選手の走りを見ると、日本人の選手と明らかに走りの質が違うと感じることがあります。彼らの骨盤は生まれつき前傾気味で、脚を前に出しやすい形状をしていて、ダイナミックな走りを可能にしています。一方、日本人は骨盤は後傾気味な人が多く、骨盤を前傾して走るのは難しく、意識して出来るようになるには訓練が必要です。また、十分な筋肉の持久力がないと、その姿勢を長く保つことができません。しかし、骨盤のポジションを意識してランニングを続けることで、しだいに骨盤が前傾したダイナミックな走りもできるようになっていきます。

腰の位置の高さを意識するためのメソッド

「腰の位置を高くする」という意識を持つことも体幹で意識したいポイントです。腰が落ちてしまっていると股関節の可動域が狭くなり、脚のみで走ってしまい、疲れやすく効率が悪い走り方になります。

腰の位置が高い走りというのは、よく「頭を上から紐でつるされているイメージを持つこと」と言われます。しかし、言葉ではイメージがつきにくいので、わかりやすく体感できるメソッドを紹介します。その場で、全力で垂直に両脚ジャンプを3回してから走り出してみてください。「ジャンプ・ジャンプ・ジャンプ、ダッシュ!」です。これをやってみると、普段より腰の位置が高く感じられるのです。そして、その感覚を覚えてランニングをしてみてください。

肩甲骨を使った「腕部」の腕振り

肩甲骨を使った「腕部」の腕振り

ランニングでの腕部の振りは、走りのテンポを刻む役割を担います。腕部の振りという言葉を使いましたが、ここで注目する部位は、両肩の後ろに位置している肩甲骨です。

肩甲骨は普通に生活していると、あまり意識されず積極的に使われる機会がほとんどありません。肩甲骨の構造の特徴は、他の骨とはつながっておらず、その周りを筋肉だけで支えている点です。そして、普段から動かしていないと筋肉がコリ固まってしまい、次第に動かしにくくなっていきます。そのため、運動不足な人が走ろうとすると、肩甲骨を使った走りをすることができません。

ランニングで、肩甲骨を使って腕を振ることは、走りにリズムを与えるだけでなく、脚の動きにも効果をもたらします。肩甲骨を後ろに引くという動作により、引いた側の上半身が後にひねられます。その反動により、逆側の下半身が前に押し出される動作が入り、スムーズな脚の運びが可能になります。

肩甲骨が固まってしまい上手く使えない場合は、まずはコリをほぐすことから始めます。筋肉を伸ばすストレッチや腕を大きく回す運動などを行い、肩甲骨の周りの筋肉のコリをなくしていきます。加えて、腕の引きを意識した腕振りのトレーニングをしていくことで、肩甲骨を使った腕の振り方をマスターしていきます。

腕振りトレーニング

腕振りのトレーニングは、肘を後ろに引くようなイメージで行います。繰り返し練習をしていくことで、だんだん肩甲骨で腕を引く動きを感じられるようになります。腕の位置は、肘をカラダの横のラインから前に出ないよう、前後の方向にリズミカルに振るようにします。腕を前に出し過ぎてしまうと、猫背になりやすく、胸が開かなくなるため呼吸にも影響してきます。肘の角度は90度あたりが適当ですが、極端に垂らしたり、曲げたりしなければ、振りやすい角度で問題ありません。

リキみ過ぎは厳禁で

腕を振ることを意識しすぎ肩に力が入り過ぎて、上半身が固まってしまっている人を見かけることがあります。リキんだ走りは、動作が固くなるだけではなく、エネルギーを余分に消耗してしまいます。このリキみを抜くには、肩をリラックスさせる必要があります。

力を抜くコツとは、手の拳を軽く握ることです。握り方は、小指と薬指はに少し力をいれて握り、中指と人差し指は軽く添え、さらに親指をその上に乗せる感じにします。また、試しに思いきりリキんで走ってみると、力を入れ過ぎた時の良くないところを体感できるので、一度実践してみてください。

推進力を伝える「脚部」の動き

推進力を伝える「脚部」の動き

直接地面に力を伝えて、前への進む推進力を得るのが「脚部」の役目です。

走行時の脚の動きのイメージは、腰を起点にして、振り子のように脚を振ります。その時、腰の位置は高めに意識します。腰が落ちてしまっていると股関節の動きが小さくなり、膝下の動きを利用した、負担の大きい走りになりやすくなります。

ランニングの脚の流れは「接地 ⇒ 蹴りだし ⇒ 前への引き戻し」で、これを繰り返し行っていきます。動作はスムーズに繰り返し行われ、一定のピッチでテンポ良く刻んでいきます。接地時間は、なるべく短く・素早く行います。長い接地で十分に力を溜めて蹴りだしたほうが力強いイメージを持っているかもしれませんが、逆に動作が停滞しスピードを落とす要因になります。

足の裏と地面が接触する接地の瞬間は、カラダのほぼ真下での着地(ミッドフット走法)がおすすめです。かかとで着地して指先に抜けるイメージのある接地ですが、かかとから着地するとカラダの前で接地することになり、ブレーキロスが発生するとともに、接地してからの蹴りだしまでの動作に時間がかかります。カラダの下での着地は、接地時にブレーキが発生しにくく、推進力を活かした走りが可能になります。

接地をしたら、次は蹴りだしです。蹴りだしと言っても、地面を後ろに蹴るというより、着地の反発を利用して弾くというイメージです。接地した脚は、これまでのスピードのもつ力が分散しないように左右にぶらさず、まっすぐ後ろに運びます。そして、地面から離れた脚は、惰性で後ろに流さず、素早く前方に引き戻し、次の動作に移ります。

ピッチ走法とストライド走法

走り方には、1歩の長さを重視したストライド走法、脚の回転を重視したピッチ走法があります。一般的にストライド走法は、強い筋力を持っていないとできない走法とされ、走り始めたばかりの人は脚のケイデンス(回転数)を重視したピッチ走法を取り入れるのが良いでしょう。

プロネーションについて

着地する時に足首が内側か、あるいは外側に傾いてしまう人がいます。筋力が弱かったり、骨格が原因で起こってしまう現象です。着地時の足首の傾きをプロネーションといい、内傾することをオーバープロネーション、外傾することをアンダープロネーションといいます。これらは、怪我や疲労の原因となる可能性をもっています。筋力アップやフォームで矯正することもできますが、プロネーションに対応したシューズを使うことでもある程度の改善が望めます。

走っている時の「視線」の先

走っている時の「視線」の先

ランニングをしている時の「視線」は、真っ直ぐ前方を見るというより、やや下を見るようにします。顎を引くことを意識することで、丁度良いポジションの視線を確保できます。顎が上がったり、首から曲げて下を向いてしまうのは、フォームのバランスを崩す原因となるので好ましくありません。走りに集中したい時は、視線を一点に定めて意識を集中させると良いでしょう。帽子やサングラスを使うと、外からの情報をカットできるので集中しやすくなります。

のんびり走っている時は良いですが、風景を眺めてしまったり、視線をきょろきょろさせていると、走ることに意識がいかなくなり、緩いランニングになってしまいます。

サングラスについて

サングラスを使用することは、外部からの情報が入ってきにくくなり、意識を集中して走ることが出来ます。日差しの強い夏場などは、UVカットのサングラスを使用することで、紫外線からの目の保護にもなります。注意したいのは、色が濃いレンズを使い目をしっかり覆えていないサングラスを使うと、瞳孔の開き方の関係で、かえって紫外線のダメージを受けやすくなることがあるため、スポーツ用を使うことをおすすめします。

吐くことを意識する「呼吸」

ランニング時の呼吸は「スッースッーハッーハッー」のように、2回吸って2回吐くリズムが、丁度良く感じる人が多いようですが、その時々のペースで一番呼吸しやすいタイミングで行うのがベストと言えます。スピードが上がってくれば「スッーハッー」のように、吸って吐いての繰り返しのリズムになるでしょう。

息を吸うことと、息を吐くことでは、吐くことに少しだけ多く意識を傾けます。呼吸で吐いた分は、反射的に吸い込もうとするからです。しかし、過度に意識すると逆に呼吸が乱れるので、走りに合わせ自然な感じで行います。

呼吸した空気は肺に送り込まれるため、カラダが猫背になったりしていると、肺が圧迫され呼吸に影響が出てきます。そのため、腕を後ろに振り胸を張ったフォームを作るように心がけます。

呼吸に関しては、ランニングを続けていくと自分自身のにあったリズムが分かってきます。これは経験が必要になるので、トレーニングを続けていく過程で自分のリズムを見つけてください。

まとめ

ランニングでは、ここで解説した動作すべてを総合して行います。走っている時は、カラダを動かすだけではなく、頭を働かせて各部位の動きを感じ取り随時チェックしていくようにします。

ランニングを始めたばかりは、全ては上手くいくことはないでしょう。しかし、走り続けてトレーニングを重ねることで、筋力や持久力がついてくるため、フォームの基本を知っていれば改善するポイントが見えてきます。それでも壁にぶつかってしまったら、ランニング講習会のような、アドバイスを貰える環境を探してみてください。