「リトルランナー」- 少年がランニングをとおして成長する姿を描いた映画

「リトルランナー」(Saint Ralph)は、2004年にカナダで制作され、2006年3月4日に日本で公開された作品。この映画の監督を務め、脚本を書いたマイケル・マッゴーワン氏は、1985年の "デトロイトマラソン" の優勝者という経歴の持ち主で、マラソンに対する愛情を感じる作品に仕上がっています。

物語の主人公は、1950年代のカトリック学校に通う14歳のラルフ・ウォーカー少年。思春期にあたる年頃のウォーカーは、興味のあることには素直に行動してしまう性格で、しばしば校則違反や問題行動を起こし、周囲から浮いている存在でした。しかも、彼の父親は戦死し、母親は重度の病気で床に伏しているという境遇にありました。ある日、ウォーカーがある事件を起こしてしまったことを、母親に伝えている最中に、母親が昏睡状態になり、目を覚まさなくなってしまう。

ここまでのストーリを見る限りでは、ウォーカー少年を取り巻く環境は深刻で、暗い映画のようにも思えますが、物語はゆったりと進み、コミカルに思えるシーンもあるため、その重さを感じないで見られます。カトリックの学校を舞台にしているため、宗教的なシーンや思想も盛り込まれていきます。

ウォーカーは、目を覚まさなくなった母親に対して看護婦が言った「奇跡でも起こさぬ限り昏睡から目覚めることはない」の言葉と、クロスカントリー部のコーチに言われた「君たちがボストンマラソンで優勝したらそれは奇跡だ」の言葉がシンクロし、自分がボストンマラソンに優勝したら母親が目覚めるのではないかと信じるようになり、一心不乱にマラソンに没頭していくのでした。

クライマックスの舞台は半世紀以上前の「第53回 ボストンマラソン」。2016年には第120回大会が開催された "ボストンマラソン" の、当時の様子を垣間見ることができます。

物語は淡々と進んでいるように見えて、終盤に向けて確実に盛り上がりを見せていきます。果たして、ウォーカー少年がボストンマラソンを完走した時、どんな結末が待っているのでしょうか。

「リトルランナー」は、マラソン競技にスポットをあてた映画ではなく、ウォーカー少年の成長のストーリーです。マラソンのシーンも過剰な演出をすることもなく描いているところに好感が持てます。映画のラストにウォーカー少年の成長を見届けることで、見終わった人たちの気持ちをホッコリさせて思わず拍手をしたくなるような、とてもいい映画です。

◆『リトル・ランナー』アダム・ブッチャー、マイケル・マッゴーワン監督来日インタビュー | cinemacafe.net
 http://www.cinemacafe.net/article/2006/02/23/388.html

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