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夏の暑さの中でも走ろう!ランニングの暑さ対策で上手に夏を乗り切る方法

本格的な夏に入ると、強い日差しと高い気温・湿度により、屋外のランニングには厳しいシーズンになります。このような気候の中で長時間ランニングや強度の高い運動は、体調を悪化させる熱中症や脱水症を起こすリスクがあるため、十分な暑さ対策をして、カラダの反応に注意を払う必要があります。

【目次】

夏の暑さについて

夏の強い日差しのイメージ

近年、夏の気温は高くなる傾向があります。下記の表1は、2020年の8月の主な都市の気温をまとめたものです。北海道は、最高気温の平均が 30度を下回っていますが、他の地域では 30度を上回り、名古屋や大阪では 35度を超えています。最低気温を見ても、25度を下回る地点は少なく、湿度も多いため、一日を通して蒸し暑い状態が続いていることが伺えます。

表1:2020年8月の平均気温と湿度
最高気温平均/最低気温平均(平均湿度)
札 幌
28.1度/19.6度(76%)
仙 台
30.9度/23.5度(81%)
東 京
34.1度/25.3度(76%)
名古屋
35.9度/26.5度(68%)
大 阪
35.7度/27.1度(66%)
福 岡
34.5度/27.0度(70%)
那 覇
32.2度/27.3度(81%)

「熱中症警戒アラート」について

「熱中症警戒アラート」は、気象庁が 2021年4月下旬から全国を対象に運用を開始した、熱中症を呼びかけ予防行動を促すために発表する情報です。「暑さ指数(WBGT:Wet Bulb Globe Temperature)」に基づいて発表されています。“WBGT” は、カラダの体温に影響する気温・湿度・輻射熱の 3つの要素で求められるもので、下記のように定義されています。なお、「熱中症警戒アラート」については、天気アプリやニュースサイトの天気情報などで利用され、ランニングに出かける時の情報として活用ができます。

熱中症予防運動指針(カッコ内の気温は参考値)
  • WBGT 31以上(気温35℃以上)
    【運動は原則中止】
    特別の場合以外は運動を中止する。特に子どもの場合には中止すべき。
  • WBGT 28~31(気温31~35℃)
    【厳重警戒(激しい運動は中止)】
    熱中症の危険性が高いので、激しい運動や持久走など体温が上昇しやすい運動は避ける。 10~20分おきに休憩をとり、水分・塩分の補給を行う。暑さに弱い人は運動を軽減または中止。
  • WBGT 25~28(気温28~31℃)
    【警戒(積極的に休憩)】
    熱中症の危険が増すので、積極的に休憩をとり適宜、水分・塩分を補給する。激しい運動では、30分おきくらいに休憩をとる。
  • WBGT 21~25(気温24~28℃)
    【注意(積極的に水分補給)】
    熱中症による死亡事故が発生する可能性がある。熱中症の兆候に注意するとともに、運動の合間に積極的に水分・塩分を補給する。
  • WBGT 21未満(気温24℃未満)
    【ほぼ安全(適宜水分補給)】
    通常は熱中症の危険は小さいが、適宜水分・塩分の補給は必要である。市民マラソンなどではこの条件でも熱中症が発生するので注意。

暑さによるカラダへの影響

暑さにまいっているマスクの女性

暑い時のランニングは、カラダにかかる負担が大きいため、トレーニングの強度を下げて、十分な給水や休息をとりながら行なうことで、熱中症や脱水症などのリスクを避けるようにします。

ランニングで起こる熱中症とは

スポーツをしている時の熱中症は、梅雨明けの暑くなり始めの時期の 7月下旬~ 8月上旬に多く発生し、日差しのある 10~16時がリスクの高い時間帯です。また、湿度が高い場合は気温があまり高く、21~ 38℃の広い範囲で起こるとされています(※2)

人のカラダは、筋肉を動かすと同時に熱も発生させます。こうした熱を、皮膚からの放熱や汗などにより冷却することで、体温を適切に保っています。しかし、高温・高湿によりムシ暑い状態だと、熱の放出を効率よく行なえず、カラダの冷却が滞るため、体温の上昇を抑えられなくなります。こうした状況が進行していくことで、熱中症が引き起こされます。

初期の症状ではフラつきや目まいなどで、続いて血液のナトリウム不足によるケイレンなどが現れ、頭痛、吐き気等などが起こり、さらに悪化すると危険な熱射病に繋がっていきます。症状は徐々に悪化していきますが、暑い中でランニングをすることはカラダへの負担が大きく、短時間での熱中症を引き起こしやすい状況のため、注意が必要になります。

また、暑さに慣れていない時期や、走り慣れていない人、以前熱中症になったことがある人は、特に注意が必要です。体調不良の人や二日酔いの人も、熱中症になりやすい傾向があります。肥満の傾向がある人は、運動による熱の発生が多いうえ発散しにくいため、涼しい屋内施設を利用したり、ウォーキングや軽いジョギングなど負荷の低い運動を選択した方が良いでしょう。

もしランニングの最中に体調が悪いと感じたら、無理をせず直ぐに走ることを止めて、涼しい場所で給水と休息を取るようにすると良いでしょう。


カラダの水分が失われる脱水症

脱水症は、汗や呼吸により体内の水分がカラダの外へ排出され、体内の水分量が低下することで起こります。汗をかくことで体内の水分量より 2%程度を失うあたりからは、持久力などのパフォーマンスの低下が起こります。水分量の 3%を失う辺りでは、強い口の渇きを伴いつつ体調に変化が起こり始めます。5%を超えると頭痛や痙攣、めまいなど明らかな体調の悪化を招いていきます。カラダの水分が不足するのと同時に、汗により血液中のナトリウムなどのミネラル成分も一緒に排出されて、血液中のナトリウム濃度が低下し、痙攣などの症状を引き起こす一因になります。

ランニングでの給水は、汗などで体外に出てしまった水分と成分を、補給するために行うものです。そのため給水には、ナトリウムといったミネラル成分が含まれるスポーツドリンクなどが適しています。

給水の時は、一度に多量に飲んでもカラダは吸収しきれないため、小まめに少量ずつ給水をとるようにします。もし、ナトリウムなどが含まれない普通の水を補給する場合は、血液のナトリウム濃度がさらに低下して体調が悪くなる恐れがあるため、塩飴やナトリウムのタブレットなどを同時に摂取して、ナトリウムもしっかり補給できるよう工夫をします。

給水のタイミングは 15~20分程度を目安にし、カラダの様子にあわせて都度補給をしていきます。もし走る時間が 20分に満たないのであれば、走る前に十分な水分を摂っておくことで、途中で給水がなくても、ほぼ問題にはならないでしょう。

【関連記事】暑い夏場のランニングで脱水症にならないための基礎知識と水分補給の方法
https://hashirou.com/article/page/water-supply-method-in-hot-summer


紫外線による影響

夏の太陽の日差しには、目には見えない紫外線が多く含まれています。紫外線は、皮膚の日焼けを促しダメージを与え疲労させるだけでなく、目から入ることでも疲労感を起こすという研究結果があります。そのため、肌には日焼け止めを塗り、目を保護するサングラスと、日差しを防ぐための帽子の着用するなどの対策が必要になります。


食欲減退と疲労の蓄積

夏シーズンは暑さにより食欲がわかなくなり、冷たいものや食べやすい麺類などに食事が偏る傾向があります。冷たいものは胃腸の働きを鈍くさせるため、食欲の低下にもつながります。暑さや紫外線により自律神経が乱れやすいうえ、日々の疲労や睡眠不足などが蓄積していくと、夏バテの状態になり、ランニングでもパフォーマンスに影響がでてきます。

ランニングの暑さ対策

木陰で休息をとる女性

走る時間を選ぶ

ランニングの暑さ対策として効果の大きいものに、比較的気温の低い時間に走ることが挙げられます。熱中症の起こりやすい時間帯は、太陽が高いところにあり、気温が高い 10時~ 16時であるため、この時間帯はランニングは避け、気温の低い早朝や、日が傾いた夕方や夜間に走ると良いでしょう。


ルートを工夫する

日差しのある時間に舗装した道路を走ると、路面温度が高く、照り返しもあるため、かなり過酷な状況になっています。そこで、直接日差しが当たらない木陰や、照り返しが少ない路面があるルートを選ぶことで、暑さによるダメージを軽減することができます。木陰が多い公園や、未舗装の緑道、長いトンネルなどもルートの一部に取り入れれば、普段とは一味違ったランニングを楽しむこともできます。

近場にトレイルがあるのであれば、暑さをしのいで走ることができます。ただし、トレイルはロードと違い、変化に富む路面がある自然の中を走り、様々なリスクがあるため、トレイルシューズやバックパック、緊急時用アイテムなどの最低限の用具が必要です。また、山でのトレイルランニングは、山路ならではのマナーもあるため、初めてトレイルに行く場合は、トレイルに慣れている友人と行動を共にしたり、練習会やイベントに参加すると良いでしょう。


ランニングウェアの選び方

ランニングで着用するシャツは、汗を素早く吸収して発散してくれる吸湿速乾性能がある、スポーツ向けの薄手のものがおすすめです。紫外線をカットし肌を保護してくれる UPF加工がされているウエアであれば、日焼けのダメージを抑えられます。普段着として着ているような綿 100%のTシャツは、乾燥しにくく、一度汗を吸ってしまうと濡れたままの状態になるため、ランニングで着るのは避けた方が良いでしょう。

ウェアの色は、白もしくは淡い色の方が光の反射率が高いため熱を持ちにくい反面、黒などの濃い色は光を吸収して熱を帯びてしまいます。そのため、炎天下で走る時は濃い色よりも、明るい白などのウェアがおすすめです。また明るい色のウェアは夜間のランニングで視認率が上がるため、事故の予防にも役立ちます。


カラダを冷やす

ランニングにより熱気を帯びるカラダは、冷水を飲んだり、水をかけることでも、内外からクールダウンできますが、冷却ツールを使えば効率的に冷やすことができます。手軽なところでは、保冷剤を手にもってランニングをしたり、休憩時にカラダに当てることです。ただし、保冷材は冷た過ぎるため、タオルでくるむなどの調節が必要です。また、濡らして冷やすタイプのタオルでもカラダを冷やすことができます。

最近は、手のひらに適温の保冷剤を装着するグッズのデサント「コアクーラー」が発売されています。


プレクーリング

プレクーリングは、あらかじめカラダを冷やしておくことで体温の上昇を抑え、運動中のパフォーマンスを上げたり、熱中症を防ぐために用いられる方法です。ランニングに出る前に、末梢部位にあたる手や足を冷水に浸したり、手のひらや足裏をアイスバックなどで冷やすことで、深部体温を下げる効果が期待できます。また、冷却率の高いシャーベット状のドリンク「アイスラリー」を飲むことでも、カラダの内部から効果的に体温を下げられます。


紫外線対策

太陽光の一部の紫外線は、肌の日焼けや目に入ることでランナーにダメージを与るものです。曇りの日でも『薄曇りの場合は、快晴時の約8~9割のUVインデックスとなりますが、曇りの場合は、快晴時の約6割※1』というように、一定量降り注ぎます。

ランニングウェアは紫外線をカットする UPF加工のものを選び、顔やウェアから露出する肌には、汗でも落ちにくいウォータープルーフ仕様の日焼け止めを塗るようにします。紫外線による目へのダメージを避けるためには、紫外線カット効果のあるサングラスをかけることが有効です。また、帽子を被り、日差しを遮ることで目を保護します。

最善の対策は、日差しのない夜間や早朝にランニングをすることで、紫外線の影響は気にしなくて済みます。


マスクの着用について

新型コロナウイルス対策として、マスクやネックゲイターを付けてランニングをする人にとっては、夏の暑さは厄介です。マスクにより、呼吸が妨げられて息苦しさを感じ、呼気による熱の発散ができなくなります。また、湿り気により喉の渇きを感じにくくなり、脱水の症状に気づきにくくなります。さらに、マスクの形に沿って日焼けするので、日焼け止めなどでケアをする必要があります。

これらを避ける最前の方法は、人通りがない場所や時間に走ることです。周りに人がいなければ、マスクをする理由がなくなります。それが出来ない場合は、マスクを外すための休憩をいれたり、息が上がらない程度にペースを落とすなどで対応します。マスク焼け対策としては、日差しのない時間に走ることが最善策ですが、UPF加工のマスクを使用したり、スポーツ向けの日焼け止めを小まめにしっかり塗ることでも改善が望めます。


コンディションを整える

夏のランニングでは、コンディションを整えることも重要になります。暑さのため寝苦しい日々が続き、食欲も減退気味になります。十分な睡眠と食事とることは、良いトレーニングをするには不可欠であるとともに、熱中症を防ぐためにも必要です。

夏は冷たいビールやお酒が美味しい季節になりますが、深酒をすることは体調不良につながるため、避けるようにします。ランニング後にお酒を飲みたい人もいるかもしれませんが、アルコールは利尿作用があり、飲むよりも多くの水分を排出するため、水分補給にはなりません。どうしてもという人は、ノンアルコール系の飲料にするか、十分な休憩と水分補給を挟んでから飲むようにします。

暑さの中でのランニング

ランニングを楽しむ男女ペア

梅雨明けはカラダの暑熱順化から

梅雨が明けると本格的に暑さが増すため、カラダを暑さに適応させる時間が必要になります。そこで、カラダを積極的に動かしていくことで適応を促すのが「暑熱順化」です。暑さの中でトレーニングを繰り返すことで、カラダが暑さに対応し耐性が高まります。汗をかきやすくなり、皮膚に近い血流量が増加することで、カラダを冷却する能力が向上します。また、血中のナトリウム不足を回避しようと、汗に含まれる塩分濃度も低くなります。順化の期間は個人差があり、数日から 2週間程度かかるとされています。

「暑熱順化」を促すためには、暑さの中で無理のない程度の距離や時間でランニングを実践します。まだ走り慣れていないランナーの場合は、ゆっくりとしたジョギングやウォーキングを行なっても良いでしょう。


アプリのチャレンジでモチベーションアップを

暑いためにやる気がなかなか起きないというランナーは、ランニングアプリ内のチャレンジイベントがおすすめです。多くのランニングアプリでは、距離などの目標が設定されたチャレンジを用意しています。目標達成者には、オリジナルのデジタルバッジなどの特典が贈られるため、コレクションとして集めても楽しめます。


暑さの中でのランニング

夏のランニングは、暑い中で行なうため体温が上がりやすく、パフォーマンスが落ちる傾向があります。また、暑さのため強度の高いトレーニングや長時間にわたるランニングは行なうのが難しく、熱射病などのリスクもあるため、体力の維持をベースにして考えます。走っている間は体調に注意を払い、ツラいのであれば無理をせず、途中で休息を挟んだり、中止することも考えましょう。

暑い中でのランニングでは、通常よりもペースを落として、走る時間を短くすることがベターです。20kmを目標にするのであれば、朝と晩の 10kmずつに分割するなど、分けて走ることで負担を軽減させます。強度の高いインターバルトレーニングを行う場合でも、通常よりペースを落として短時間で終わるように設定します。

カラダが暑さに慣れてきたのであれば、スローペースで長い距離を走ることも取り入れていきます。暑い中で長い距離を走り、夏場にスタミナの向上をはかれば、秋以降の大会に向けて良い土台が作れます。

もし暑さに弱かったり苦手な人は、無理して屋外でランニングをせず、ジムなどに置いてあるトレッドミルやトレーニング器具を活用して、涼しい室内で運動を行なうのも良い方法です。