アルトラが「マスクを着用したランニング」の実験を行い、トレーニングへの影響を検証

マスクをして走る女性

アメリカのユタ州で誕生したシューズブランド「ALTRA(アルトラ)」を展開する株式会社ストライドでは、6月に行った「コロナ禍における運動意識に関する調査」に続き、新型コロナウイルスの感染予防のためにマスクを着用したランナーが増加していることを受け、「マスクを着用したランニングの危険性」を検証するための実証テストを行いました。

6月の調査では、コロナ禍における自粛期間で、運動不足を解消するためにランナー人口が増加傾向にあり、さらにランニング中にマスクやフェイスガードをして走る人の割合が、62.3%にのぼることが明らかになりました。そこでアルトラは、新型コロナウイルスの感染を予防しながら安全にランニングを行えるよう、自社が所有する呼吸ガス分析装置を使用し、マスクを着用したランニングにおけるランナーへの影響を検証しました。

その結果、マスク着用時のランニングは着けていない時と比べて、心肺への負担が増大することが分かりました。そのことから、マスク着用が推奨されている社会的距離(ソーシャルディスタンス)を保てない場合は、低~中強度のランニングをすることが好ましく、短時間しか続かないような高強度のランニングを実施する場合は、人込みを避け、マスクを着用しないことが適切であることが明らかになったとしています。

実証実験概要
場 所 
TREAT内 ー STRIDE PERFORMANCE CENTER(多摩市)
実施日時
2020年6月24日(水)
被験者 
ランニング中~上級者(26歳~57歳)男女10名
温 度 
24℃
湿 度 
56%

マスク着用ランニングへのトレッドミル負荷試験

今回、アルトラでは、自社の呼吸ガス分析装置を用いて、トレッドミルで徐々に運動強度を上げて走るランナー10人の1分換気量(1分あたりの呼吸で肺を出入りする空気量)と酸素摂取量を測定しました。時速3kmからスタートし、下記の表のように1分毎に速度や傾斜に変化をつけ負荷を上げていき、本人が限界だと感じたところで測定を終了。マスクを着用した場合と着用しない場合を比較するため、各ランナーに対し、それぞれ2回ずつ測定が行われました。

図1

また、実験後にはマスク着用時と非着用時の主観的な運動強度(RPE: Rate of Perceived Exertion)のアンケートも実施し、主観的な「きつさ」や「辛さ」を測りました。

マスクを着用してのランニングは心肺に対する負担が大きい

この実験の結果、マスク着用時は非着用時と比較して、1分換気量および酸素摂取量はいずれも減少しました。それぞれの減少率については、1分換気量は平均24%、酸素摂取量は平均13%と、1分換気量の方がより大きな変化が見られました。このことから、酸素摂取量はマスク着用の有無により大きな変化はないものの、1分換気量は着用時に減少していることから、マスク着用時は、呼吸の回数を増加させることで、酸素の摂取を補っているものと考えられます。

<結論>
高強度の運動では、マスク着用により心肺への負担が大きくなるほか、運動強度が高くなるにつれて、負担も増大することが分かりました。

10人中10人が「マスク着用時の方が身体的負担が大きい」と回答

主観的な運動強度に関するアンケートの結果、ランナー10人全員が「マスクを着用した時のランニングの方が身体的な負担が大きい」と答えました。ランニング上級者でウルトラマラソンの完走経験もある上野陽貴さんは「マスクを着用して走ると、汗で湿り息が吸いにくくなった。また口を大きく開かないと息が入ってこなくなり、鼻呼吸も難しい。マスクを着用していない時と同じ距離は走れないと思う」と述べています。

<結論>
心理的に呼吸のしにくさ・圧迫感を感じるのと同時に、マスクが呼気や汗によって発生した水分を含むことで、呼吸の制限を強めていることが分かりました。

人が多い場所では、ゆったりとしたペースでのランニングを推奨

マスク着用が推奨されている社会的距離(ソーシャルディスタンス)を保てない場所でのランニングでは、低~中強度(80%VO2max以下)のゆったりとしたペースでのランニングが望ましいと考えられます。また、高強度のランニング(90%~100%VO2max)を実施する場合は、人混みを避けた上で、マスクを着用しないで行うことを推奨します。

VERSATRパフォーマンススペシャリストで、元東京ヤクルトスワローズのアスレティックトレーナーでもある 橘内基純博士は『マスクを着用した上でのランニングは、心理的な不安や圧迫感に加えて、循環機能に対する影響もあることが今回の結果から推察されると思います。自身や他者への影響も少なく、安全かつ健康的にランニングを継続するためにも、適切な強度やペースを守った上で行うことにより、より楽しく快適さを感じながら続けることができると思います。』と述べています。

マスク着用の激しいランニングではトレーニング効果が低下

長距離ランニングのトレーニングにおける重要な要素の1つは「最大酸素摂取量(VO2max)の向上」で、100%~120%VO2maxの運動強度が必要です。検証結果から分かるように、マスクを着用し呼吸が制限されている状態で、120%VO2maxのトレーニングを行うことは困難であるほか、長時間にわたる継続的なランニングができなくなります。

また、呼吸がしにくい状態で負荷の高いトレーニングを行うと、最適な動きではなく無理な呼吸を強制する「代償動作」によるトレーニングを実施することになり、必要以上の疲れや身体の左右のバランスの差が強調されるため、怪我に繋がる可能性があります。このように、マスクを着用した状態での激しいランニングでは、トレーニング効果が上がらず危険なうえ、高地トレーニングのような効果向上は期待できません。

株式会社ストライドについて

今回の実験を実施した「株式会社ストライド」は、アルトラをはじめアウトドア及びフィットネス関連製品の販売、卸売りを行う「STRIDE LAB」を全国に5店舗構えています。また、オンラインストアも展開しており、ランニングをはじめ様々なアウトドアグッズを取り揃えています。

STRIDE LAB – EVIDENCE BASED NATURAL RUNNING.
https://stridelab.jp/

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