ランナーが減少気味を示すスポーツライフに関する調査データを笹川スポーツ財団が公表
笹川スポーツ財団は、1992年から隔年で実施している「スポーツライフに関する調査(スポーツライフ・データ)」で明らかになった、2024年調査におけるジョギング・ランニング実施率を公表しました。
今回、公表されたデータは「年1回以上のジョギング・ランニング実施」を目安とした調査において、性別・年代別などで区分されたものになります。“年1回以上”という調査基準については、ランニングの習慣化までは明らかにはできませんが、ランニングに関わる一つの基準として見ることができます。
- 年1回以上のジョギング・ランニング実施率・推計実施人口:2020年のピークから減少傾向が続く
- 実施率:2020年:10.2% → 2022年8.5% → 2024年7.4%
推計実施人口:2020年:1,055万人 → 2022年877万人 → 2024年758万人
- 性別・年代別
- 前回調査から男性50歳代の実施率が増加、男性40歳代、女性60・70歳以上は微増。女性20歳代の実施率は、2020年15.8%から2024年4.9%と大きく減少
- 都市規模別
- 東京都区部が10.1%で最も高く、20大都市の8.6%のみ前回調査から増加。
<主な調査結果>
「スポーツライフ・データ2024」調査概要
- 調査内容:運動・スポーツ実施状況、運動・スポーツ施設、スポーツクラブ・同好会・チーム、スポーツ観戦、スポーツボランティア、日常生活における身体活動、生活習慣・健康 他
- 調査対象:全国の市区町村に居住する満18歳以上の男女3,000人(男性: 1,498人、女性1,502人)
- 地点数:300地点(大都市90地点、人口10万人以上の市122地点、人口10万人未満の市64地点、町村24地点)
調査時期:2024年6月7日~7月7日以下に掲載する調査に伴う図・表は、笹川スポーツ財団「スポーツライフに関する調査報告書」(1998~2024)より作成されています。
2024年のジョギング・ランニング実施率(年1回以上)は推計人口758万人
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図1. 全体・性別(20歳以上):年1回以上の「ジョギング・ランニング」実施率の推移(1998年~2024年) 年1回以上のジョギング・ランニング実施率は2022年の8.5%から1.1ポイント減少し、2024年は7.4%でした(図1)。性別にみると男性の実施率は11.4%、女性は3.3%と、いずれも2022年から1ポイント程度減少しています。実施率の推移を過去20年間で振り返ってみると、2004年(6.6%)から増加傾向がみられていましたが、2020年の10.2%をピークに減少に転じ、2024年も減少が続いています。
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表1. 全体・性別:ジョギング・ランニング実施率(年1回以上)と推計実施人口(万人)の年次推移
推計人口は住民基本台帳の成人人口(人)に実施率(%)を乗じて算出 推計値を算出する際に端数が発生するため、全体の人口と男性・女性を合計した人口は必ずしも一致しない。2024年に年1回以上のジョギング・ランニングを実施した人は推計で758万人でした(表1)。過去最高を記録した2020年の1,055万人からは約300万人減少しています。2020年での大きな出来事として、新型コロナウイルスの拡大・流行があり、人との接触を避けるため、ソーシャルディスタンスが呼びかけられていました。そのため、個人単位でできるアクティビティとしてランニングが注目をあつめ、実践する人が増加していた時期にあたります。2023年以降、パンデミックが収束していくのに合わせて推計実施人口も減少しています。
性別にみると男性は564万人、女性は175万人であり、年1回以上ジョギング・ランニングを実施する人は男性の方が多いです。この傾向は調査を開始した1998年から変わらず、推計実施人口の男女差は拡大していき、2024年には3倍以上の開きを見せています。また女性は同調査が開始されて以降、実施率が最も低くなり、推計実施人口も20年ぶりに200万人を下回っています。
【性別・年代別】ジョギング・ランニング実施率(年1回以上)
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図2. 男性(20歳以上):年1回以上の「ジョギング・ランニング」実施率の推移(1998年~2024年) 2024年の男性の年1回以上の実施率は、40歳代の18.2%が最も高く、20歳代13.5%、30歳代12.9%、50歳代12.6%と続いています(図2)。50歳代以下の実施率は調査年度によって変動はあるものの、2020年をピークに減少傾向にあります。
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図3. 女性(20歳以上):年1回以上の「ジョギング・ランニング」実施率の推移(1998年~2024年) 女性の2024年実施率は40歳代の5.1%が最も高く、20歳代4.9%、30歳代3.9%と続いています(図3)。20歳代の実施率はほかの年代に比べ高い傾向が続いていましたが、2020年から3分の1程度へと大きく減少し、2024年は40歳代を下回っています。30歳代の実施率も減少傾向が継続しています。これは、2007年に東京マラソンが開始されて以降続いていたマラソンブームがひと段落し、ムーブメントの一端を担っていた若い女性からの注目度が下がっているためであるとも考えられます。そうした一方、健康寿命などが注目を集める60歳代、70歳以上の年代は、2022年より実施率が増加傾向にあります。
【都市規模別】ジョギング・ランニング実施率(年1回以上)
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図4. 都市規模別(20歳以上):年1回以上の「ジョギング・ランニング」実施率の推移(1998年~2024年) 都市規模別にみると、2024年は東京都区部が10.1%で最も高く、大きな都市圏のほうが高い実施率を持っています(図4)。一方10万人未満の市に目を向けると減少傾向が続いており、規模の大きな地域と比べると5.5%台と低い水準を示しています。
笹川スポーツ財団、担当者のコメント
松下 由季(笹川スポーツ財団 シニア政策オフィサー)ジョギング・ランニングの年1回以上の実施率は、東京マラソン開始後の2008年から増加し、コロナ禍初期である2020年に全体および男性で過去最高を記録したが、その後減少に転じ、2024年は2008年と同水準になった。前回調査からは男性40・50歳代、女性の60歳代・70歳以上で増加した一方で、女性20歳代では大幅に減少するなど、全体としては減少傾向が継続した。
ライフスタイルの変化によるSNSやスマホゲームの利用、動画の視聴といった余暇活動の選択肢拡大が、運動・スポーツ実施率全体の減少傾向の一因となっていると推測される。このような中、健康志向や市民マラソン大会の増加を背景に上昇してきたジョギング・ランニング実施率も20・30歳代の顕著な低下に牽引され、減少する結果となった。また、近年は人件費・物価上昇に伴う大会運営費や参加費の高騰、大会の飽和状態による参加者数の減少から中止や終了する大会も散見され、継続意欲の維持が困難な状況も実施率減少の要因となっている可能性がある。
