サブ2を狙ったナイキ「BREAKING2」は、キプチョゲが2時間を切りへ26秒まで迫る

NIKE BREAKING2

ナイキがマラソンをサブ2(2時間未満)で走ることをミッションとして立ち上げた『BREAKING2』は、2017年5月6日(土)にイタリアのモンツァで行われ、エリウド・キプチョゲ(ケニア)が「2時間0分25秒」でゴールし、現世界記録(2時間2分57秒)を2分32秒上回りました。しかし、サブ2には僅か「26秒」たりず、ミッションの達成は成りませんでした。単純計算すると、1kmごとに0.6秒(約3.5m)ずつ遅れていったことになります。なお、今回の記録は未公認のため、世界記録が更新されることはありません。

トップでゴールをしたエリウド・キプチョゲは、自己ベストの2時間3分5秒よりも2分40秒記録を更新しました。セナイ・タデッセ(エリトリア)は2時間6分51秒で自己ベストに3分50秒及ばず、レリサ・デシサ(エチオピア)は、2時間14分10秒でゴールラインを通過しました。

『BREAKING2』の結果
  • エリウド・キプチョゲ(ケニア)
    2時間00分25秒
  • セナイ・タデッセ(エリトリア)
    2時間06分51秒
  • レリサ・デシサ(エチオピア) 
    2時間14分10秒

『BREAKING2』について

現在のマラソンの世界記録は、デニス・キプルト・キメット(ケニア)が2014年のベルリンマラソンで記録した2時間2分57秒です。ベルリンマラソンのコースが高速で記録を出しやすいとはいえ、一般の公道を利用しているためタイムロスをする要素が多く存在します。

今回ナイキが立ち上げて開催した『BREAKING2』は、前人未到のサブ2達成というミッションに集中するため、革新的なシューズやウェアを投入し、トレーニングやコンディショニングを計画し、走行するのに適したロケーションを選定するなど、細部まで突き詰めて遂行したプロジェクトです。

NIKE BREAKING2 ランナー

サブ2達成の可能性を秘めたランナー

『BREAKING2』に選出されたランナーは、レリサ・デシサ(エチオピア)、エリウド・キプチョゲ(ケニア)、ゼルセナイ・タデッセ(エリトリア)の3人です。

NIKE BREAKING2 (左)デシサ、(中央)キプチョゲ、(右)タデッセ

レリサ・デシサ選手は、選ばれたランナーの中で最年少の27歳。2013年のドバイマラソンで2時間4分45秒の好タイムをマークしており、実力もさることながら伸びシロを感じさせるランナーです。

エリウド・キプチョゲ選手は、2016年のロンドンマラソンで歴代3位の2時間3分5秒のタイムを持つトップランナーです。2016年のリオ五輪の男子マラソンでは金メダルを獲得しており、選出されたランナーの中で一番「サブ2」に近いところにいます。

ゼルセナイ・タデッセ選手は、フルマラソンでは突出した記録はないものの、ハーフマラソンでは58分23秒の世界記録を持つスピードランナーです。

最適なロケーション

NIKE BREAKING2 モンツァ

『BREAKING2』が行われた場所は、イタリアのモンツァ郊外にあるF1も開催されるサーキット「アウトドローモ・ナツィオナーレ・ディ・モンツァ」に設けられた、2.4kmの周回コース。高度、気温、蒸気圧などの条件を考慮し最適とされた場所です。

新たに開発されたシューズとウェア

シューズは、ナイキが新たなミッドソールを採用した「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ エリート」が使用され、クッション性と反発力でランナーの足元から援護しました。ランナーが着用したウェアは、快適さ・フィット感・重量の全てを再考し、各選手の身体をスキャンしてカスタマイズしたものを使用しました。

NIKE BREAKING2 シューズとウェア

サブ2のために練られた戦略

『BREAKING2』のレース本番では「サブ2」を達成するために、様々な戦略が練られ展開されました。

レースでは、先頭にタイマーを乗せた先導車が走りました。タイマーは、通常のレースより細かい200m毎に情報更新を行い、まだ薄暗い時間帯ではレーザー光でペーサーの足元を照らしの足並みを揃えるなどの役割を果たしました。

ペーサー陣は30人の実力あるランナーで構成され、常に6人のペーサーがフォーメーションを組みスピードを維持し続けるとともに、風よけの役目を果たしました。ペーサーは疲労によるスピードダウンを防止するため、定期的にローテーションしフレッシュなペーサーが役割にあたりました。

適切な水分補給

水分補給は、それぞれのランナーが長距離を走るのに適した成分でカスタマイズした飲物を摂取し、発汗での体液損失から守りました。補給は並走する自転車から定期的に手渡しすることで、給水時のタイムロスを極力少なくすることに成功しています。

今後の展開

『BREAKING2』のレースの様子は、YouTubeや、Facebook(最大1週間)で動画を見ることができます。また、ナショナルジオグラフィックと提携し制作された長編ドキュメンタリーが、今夏の終わり頃に公開して『BREAKING2』プロジェクトは終わる模様です。

ランナーが使用したシューズに採用された技術は、レーシングシューズ「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%」と「ナイキ ズームフライ」、そして「エア ズーム ペガサス 34」のニューモデルに還元され、順次一般発売されていきます。

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