ペーサーとして盲人マラソン大会に挑戦する青年を描いた小説「風が吹いたり、花が散ったり」

走ることを通し、登場人物たちが自分自身の過去と対峙することで、大人になっていく青春成長ストーリー。

物語は、盲人マラソンに挑む一人の女性「さち」と、思いがけない出会いから、彼女のペーサーをやることになった19歳の青年「亮磨」を中心に展開されます。

亮磨は、かつて自分が犯してしまった過ちのために、光を見つけられず闇の中を生きている、愛想のない新人フリーター。運動することが趣味というわけではなく、どちらかといえば運動不足の若者。そんな亮磨が、さちとの出会いがきっかけから、走り始めることで、徐々に光を見つけていきます。しかし、さちとの出会いは亮磨にとっては最悪で、ずっと負い目を持ち続けてしまうものだった。

亮磨、さち、それぞれを取り巻く人物たち各々には線が伸びていて、その線はページを読み進めていくなかで不器用に絡み合いながらストーリーを描き出していきます。

盲人マラソンをテーマにした小説ですが、基本的な知識は書かれるものの、盲人マラソンの競技自体はあまり深く掘り下げてはいません。しかし、ランナー・ペーサーの心理描写はきめ細かく描かれており、盲人マラソンを知るきっかけになる良い小説です。

作者の朝倉宏景氏は、高校野球を題材にした「白球アフロ」が、2012年の第7回小説現代長編新人賞で奨励賞を受賞。以降も「野球部ひとり」「強く結べ、ポニーテール」と野球を題材にした小説を多く執筆している新鋭の作家です。

楽天ウェブサービスセンター